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長角苗族映画:落繞(日本語セリフ)

2021-02-16

   


翻訳:朱 明賢、楊 国花、陳 応梅、楊 順佳、郭 沢雄

修正:宮澤 詩帆

指導:王 暁梅、楊 梅竹

監修:姚 武強


出品:六盤水市枝憶影視伝媒有限公司

 

この映画は中国とノルウェーが六枝特区の梭戛生態博物館を共同建設して20周年を記念するために。1997―2017

 

美珠の独白:

 私は

 この美しくて、世界から隔絶されたところに生まれました。

 ここは昔ながらの風景があり、神秘的な場所です。

 独特な文化伝統を象徴する長角の髪飾りは今までも続いています。

 この世界に対して、

 私たちミャオ族は自分たち独自の考え方を持っています。

 例えば、死に対する考え方。

 死は先祖との交流し、ひそかに言葉を交わす機会だと思います。

 死は再生であり、命は輪廻転生すると考えられています。

 人がこの世を去ったとき(亡くなったとき)、

 私たちは従来の習慣を踏襲して、

 その人のために、全てのことを準備しておきます。

 例えば、牛や羊を屠ります。

 そして牛と羊の魂に天国への道を案内させます。

 長角ミャオ族では、

 葬式は「打」と呼ばれます。

 人がこの世を去り、

 現世に別れを告げるこの儀式は、

 親族と共に村人総出花で飾った部屋で執り行われます。

 この部屋は「嘎房」と呼ばれます。

 通称は「霊堂」です。

 私たちは共に暮らすことを好み、伝統と風習に従って日々を送っています。

 だから、私たちはどこへ行こうとも、

 どんなに遠く離れようとも、ることがあっても、どれほどの時を離れて過ごしたとしても、

 最後は、この場所に戻ってきます。

 この場所は私たちの故郷であり、定められた運命の場所だからです。

 私たちは冥々の裡で定められたことを尊重し

 神秘的な力を信じています。

 私たちは鶏の太ももの骨(鶏卦)で来年の収穫を占います。

 さらに、鶏の太ももの骨(鶏卦)で婚姻を占います。

美珠の母:「美珠、宇さんはいい人ですよ。」

     「あなたはきっと幸せになれるわ。」

ズル(寨老):「さあ、そこで叩頭しなさい。(頭を地につけてお辞儀をしなさい)」

他の人:「もういいと言われるまで叩頭を続けなさい。」

美珠の父:「頭をあげなさい、宇さん。」

小宇:「はい。」

ズル(寨老):「さあ、席につきなさい。」

ズル(寨老):「鶏卦(占い)を始めるので、まず料理(鶏肉)を食べてもらう。」

ズル(寨老):「鶏卦(占い)の結果を見てみよう。」

ブモ:「誰が鶏卦(占い)の結果を告げるのですか?」

ブモ:「この結婚は二人にとっていいものになると鶏卦(占い)の結果がでていますか?」

中国の神秘的な民族

」という言葉はミャオ族の言語で集落の意味です。「落」という言葉は一つの集落を意味します。

これは、初めて、人類学の視点から長角ミャオ族の風俗文化を説明した映画です。

小宇:「ブモ、ブモ(呪術師)」

小宇:「早くうちに行って、私のイバ(父)を見てきてください。」

小宇:「彼の病気が再発しました。」

ブモ:「そうですか?焦らずに待ってください。」

小宇:「彼は今朝から具合が悪いです。」

小宇:「あなたを連れてくると言ったのですが、父は連れてこないでいいと私を留めるのです。」

小宇:「美珠、美珠」

美珠:「宇さん」

美珠:「ブモ」

ブモ:「美珠、帰って来たのか。」

美珠;「はい、ホテルの薬草が尽きてしまったので

美珠:「薬草を採りに来ました。ついでに家に寄って

美珠:「えっと、どうかされたんですか?」

ブモ:「宇さん」

美珠:「お父さんがまた具合が悪くなったのですか?」

小宇:「今朝から病気が再発しています。」

小宇:「だからブモさんに見てもらいたいと思って。」

美珠:「私もなにかお手伝いさせてください。」

ブモ:「大丈夫です。私たちがいます。安心して任せてください。」

美珠の父:「美珠」

美珠:「イバ(父さん)」

美珠の父:「お帰りなさい」

美珠:「あっ」

美珠:「宇さんのイバ(お父様)が病気なんです。」

美珠の父:「お母さんが家でお前のことを待っているよ。」

美珠の父:「早く家に帰ってきなさい。」

ブモ:「美珠、心配しないでください。」

ブモ:「私がいるから大丈夫です。まず家に帰りなさい。」

美珠:「分かりました。では、家に帰ります。」

美珠の母:「美珠、お帰りなさい!」

美珠;「私がやるわ。」

美珠の母:「うん」

美珠の母:「ゆっくりして。」

美珠:「うん」

美珠の母:「さぁ、座って

美珠:「 お父さん(イバ)」

美珠の父「うん」

美珠の母:「これをとっておきなさい。」

美珠の母:「結婚式の時には、お母さんがあなたの髪をきれいに梳いてあげる。」

美珠「お母さん(イニアン)、私はまだ結婚したくないです。」

美珠:「私はお母さんと(イニアン)一緒にいたいです。」

美珠の父:「美珠」

美珠:「なあに?」

美珠の父:「どこに行くんだ?」

美珠:「えっと・・・」

美珠の父:「お父さん(イバ)と裏庭に行って、トウモロコシを採るのをてつだってくれないか?」

美珠「はい」

通りすがりの人A:「宇さん」

通りすがりの人A:「どうして吹くのをやめてしまったの?」

通りすがりの人B:「美珠が来ないから?」

ホテルの警備員:「こんばんは、韓社長。」

ホテルのロビーの店員:「こんばんは、韓社長。」

韓智:「劉社長はどこにいる?劉社長に私の事務室に来るよう伝えろ。」

ホテルのロビーの店員:「はい」

美珠の母:「美珠、寒くなって布団をもう一つ。」

美珠「うん」

美珠の母:「お父さん(イバ)は宇さんがあまり好きではないみたい。」

美珠:「そうね」

美珠:「だけど、私たちが子供の頃、お父さんも宇さんが好きだったのを覚えています。」

美珠:「どうして今は嫌なのか分かりません。」

美珠の母:「もうあまり気にしないで。」

美珠依年:「明日、まだ薬草を採らなければならないから。」

美珠の母:「早く休みなさい」

美珠「うん」

美珠の母:「お父さんには、後で聞いてみます。」

美珠の母:「だから今日はおやすみなさい。」

美珠「うん」

劉洋:「韓社長、私に何か御用ですか?」

韓智:「劉洋」

韓智:「明日は牂牁江にパラグライダーをしに行こうと思う。」

韓智:「一緒に行かないか?」

劉洋:「また行くのか?この間行ったばかりじゃないですか?」

韓智:「近いうちに六枝国際パラグライダー大会がある。」

韓智:「知らなかったか?」

劉洋:「試合に出るのですか?」

劉洋:「いや、ちょっと練習したいだけだ。」

韓智:「その大会では、色々な国から選手がやって来る。」

韓智:「私は彼らと試合をしてみたいんだ。」

劉洋:「自分一人だけでやってください。」

韓智:「あ、そうだ。後で一杯飲んで、お祝いしよう。」

劉洋:「韓社長」

劉洋:「私たちは長い付き合いです。あなたのことなら大体はわかっているつもりです。」

劉洋:「何を祝うというのですか?君はお酒を飲みたいだけです。行きましょう。」

韓智:「行こう」

美珠の母:「寨老が2日前に私を訪ねてきました。」

美珠の母:「美珠の、仲人が決まったそうです。」

美珠の母:「美珠を産んだ時は難産で、私は危うく死ぬところだった。」

美珠の母:「だけど、美珠も大きくなりました。」

美珠の母:「私はあの子に、ちゃんとした家へ嫁いでほしいだけなんです。」

美珠の母:「そうしたら、後悔はありません。」

美珠の母:「ね、あなた。」

美珠の父:「お帰り」

美珠の父:「ブモ」

ブモ:「えっ、どこに行くのですか?」

美珠の父:「妻はお産の後、出血で苦しんでいる。」

ブモ:「なんてことだ。赤ん坊はどうした?」

美珠の父:「死んだ。」

ブモ:「母親はそのことを知っているのか?」

美珠の父:「いや、出産後、彼女は気を失ったから、赤ん坊が死んだことは知らない。」

ブモ:「赤ん坊は?どこへやったんだ?」

(苗語の挨拶の意味)

美珠:「へへへ」

美珠:「あっ」

美珠:「怒ったの?」

小宇:「いいや」

美珠:「昨日はお父さんにトウモロコシの収穫を手伝うように言われたの。」

美珠「だからあなたのところへ行くことができなかったのよ。お父さんから言われたことは断れないわ。」

美珠:「だから怒らないで。」

小宇:「長い間あなたに会うことができなかったから、とても会いたかった。」

美珠:「知っているわ。だから会いに来たの。」

美珠:「でも、今日は長くはいられないの。」

美珠:「ホテルの薬草のストックがもうなくなってしまったの。」

美珠:「だから薬草を採りにいかないと。」

美珠:「でも、すぐ国慶節になります。」

美珠:「その時は本当に何の仕事もしなくていいです。」

美珠:「だから一緒に遊びに行けるわ。」

小宇:「それは楽しみだね。」

美珠:「では、その時は岩足町に一緒に行こう。」

美珠:「うん」

美珠:「ええ、岩足町の近くには山がたくさんあるわ。」

美珠:「そこで薬草を採ることができる。」

美珠:「そうだ!あなたも私と一緒来ればいいのよ。」

美珠:「そうしたら、薬草を入れた籠を背負うのも手伝ってもらえるわよね。」

美珠:「そうしましょうよ」

美珠:「あっ」

小宇:「君が一人で行ってください。」

美珠:「ちょっと待って。」

小宇:「放せ。」

美珠「一緒に行こうって言ったじゃない。」

小宇:「あなたは薬草を採る以外に何か考えることは無いのか?」

小宇:「いつも薬草を採ることばかりだ。」

小宇:「放せ」

美珠:「そうよ、私は薬草を採る以外、他のことはできないわ。」

小宇:「はいはい、わかったよ。一緒に行きますよ」

小宇:「ちょっと待ってて」

美珠:「へィへィへィ」

小宇:「しょうもない奴だなぁ。」

美珠:「へィへィへィ」

小宇:「ついてくるな」

小宇:「なんだよ」

美珠:「私に腹を立てるなんてひどい」

美珠:「あなたは私に一年借りがあるのよ」

美珠:「宇さん」

小宇:「なに」

美珠:「これはあなたが作った最高の簫だと思います。」

小宇:「それは間違いないです。」

美珠:「えー」

小宇:「どうしたの?」

美珠:「今日は薬草を採るのに忙しいかもしれません。」

美珠:「だから、今日はあなたが三目簫を吹いてくれるのを聴くことができないかもしれないです。」

小宇:「大丈夫。」

美珠:「じゃ、そろそろ時間だから…」

美珠:「本当に行かないと。」

小宇:「早く行けよ。」

美珠:「じゃ、約束よ。今度吹くのを聞かせて頂戴ね。」

小宇:「気をつけて。」

 

美珠:「ブモ」

ブモ:「あら、美珠、来たのか。」

美珠:「はい、私はこれから薬草を採りに行きます。」

美珠:「あの、今は急いでたから持ってこられなかったのだけど、今度必ず足を浸す漢方薬の桶を持ってきます。」

ブモ:「大丈夫、しっかり働きなさい。薬を調合する時は細心の注意で慎重に臨みなさい。決して注意を疎かにしてはいけないよ。」

美珠:「分かったわ。心配しないで。」

ブモ:「薬の用意ができた。飲むことを忘れないで。」

美珠:「分かりました。ブモもお気をつけてくださいね。」

ブモ:「はい。」

美珠:「じゃ、行きます。」

ブモ:「気をつけて。」

劉洋:「おいおい、韓智、聞こえるか?」

韓智:「おい、やっと起きたのか?俺は今日一人でパラグライダー・バッグを山に背負ってきたんだぞ。」

劉洋:「ハハハ。」

韓智:「ちょっと待ってろ。後でいくつか技を披露するから、よく見ていてくれ。」

劉洋:「おい、あまり本気になるなよ。」

韓智:「後で広場の芝生に着陸するつもりだから、そこで待っている。」

劉洋:「分かった。」

ガイドさんA:「離陸点、注意してください。離陸点、注意してください。」

ガイドさんA:「風筒の風向きが変わります。風筒の風向きが変わります。」

ガイドさんA:「離陸を一時停止します。離陸を一時停止します。」

ガイドさんB:「着陸場、注意してください。着陸場、注意してください。」

ガイドさんB:「滑空しているのは私たちの選手ではありません。」

ガイドさんB:「しかし、救援の準備をしてください。救援の準備をしてください。」

韓智:「おい、おいおい。助けてくれ、誰か」

韓智:「ああ、怪我をしたんだ。助けを呼んでくれないか?」

美珠:「何があったのですか?どこが怪我をしましたか。」

韓智:「パラグライダーのロープが切れて足を怪我しました。ここはどこですか?」

美珠:「戛寨です。」

韓智:「動かさないでください。助けを呼んでくれませんか?」

美珠:「無駄です。このへんは電波がないから電話がつながらない。」

韓智:「あなたの携帯電話を見せてくれませんか?」

韓智:「早く誰か助けを探してきた方がいいですよ。」

美珠:「この近くには普段誰もいません。」

美珠:「勝手に動かないで、危ないです。」

美珠:「すぐできますから、むやみに動かないでください。できました。薬を塗ってあげます。」

韓智:「やめてくれ、動かさないで。」

美珠:「私を信じられないんですよね。でも、どうせ近くには誰もいません。助けが必要ならば、私はあなたを助けたいのですが、私に助けてほしくないならいいです。じゃあ私は行きます。」

韓智:「あの…」

美珠:「分かりました。動かないでください。力を抜いて、ほら、ちょっと我慢するだけです。私の家はすぐ近くにあります。先に私の家に行きましょう。こちらです。」

韓智:「ここはどこですか?」

美珠:「戛寨です。」

美珠:「宇ちゃん、宇ちゃん。早く手伝って。早く。疲れた。私の家に行きましょう。」

韓智:「あまり暴れないで落ち着いてください。」

劉洋:「韓智、韓智、韓智」

美珠:「お母さん(イニアン)」

美珠の母:「お帰り。えっ、宇ちゃんどうしたの。」

美珠:「いいえ、宇ちゃんでは無いわ。山であった人が怪我をしたの。傷の手当てをするために連れ帰ってきたの。私の部屋で手当てをしましょう。こちらです。」

警察官A:「どうですか?見つかりましたか。」

警察官A:「さっき彼のパラグライダーだけ見つかりました。」

劉洋:「本人は?」

警察官A:「心配しないでください。私たちは全ての……」

劉洋:「心配しないでいられますか?彼は親友ですよ!」

警察官B:「落ち着いてください。すぐに連絡があるはずです。」

美珠:「何か食べたほうがいいわ。」

韓智:「いらない。食べたい気分じゃないんだ。食欲がなくて。」

美珠:「いいですが、夜にお腹が空いたと言っても誰も食べ物を持ってきませんよ。」

韓智:「電話をしてくれませんか?私は長い間行方不明になっています。私の友達はきっとすごく心配しているに違いありません。」

韓智:「おい、劉洋。」

劉洋:「韓智?今どこにいる?」

韓智:「大丈夫、大丈夫だ。今、戛寨にいる。」

美珠の母:「美珠はどうして外から男の人を連れて来たのかしら?」

美珠の父:「彼が怪我をしたからと言っていたじゃないか。放っておくことができなかったんだろう。どうせ数日のあいだのことだ。」

韓智:「まあ、もう心配するな。それにしても、ここはまるで原始部族の村だ。」

韓智:「じゃ、またな。」

美珠:「さっきあなたの傷の様子をチェックするのを忘れました。」

韓智:「あ、さっき聞き忘れましたが、あなたの名前は?」

美珠:「美珠と申します。」

韓智:「美珠ですね。今度入る時にドアをノックしてくれませんか?」

美珠:「すみませんでした。ところで、あなたの名前は何ですか?」

韓智:「あの…私はこの本の作者です。」

美珠:「この本の作者は韓智といいます、ここに書いてあります。」

韓智:「私が韓智です。」

美珠:「あの、すみません、韓先生。あなたがそうだとは思いませんでした。いいえ、あなたの詩がとても素晴らしくて、私はとても好きです。」

韓智:「これらの詩や随筆は特にそんなに優れているわけではないです。どうして私の本を持っているのですか?」

美珠:「普段から詩が大好きです。とりわけこの本が好きです。芸術性が高くて面白いと思います。」

韓智:「どうか座ってください。気まずいです。」

韓智:「今日は助けてくれてありがとうございます。応急手当もできて、すごいですね。」

美珠:「そんな、気にしないでください。お会いできて光栄です。医学的なことや薬のことはブモが私に教えててくれました。」

韓智:「ブモ?ブモとは誰ですか?」

美珠:「ブモは司祭です。ああ、あなたたちの感覚だと、魔法使いとれも行ったらよいのでしょうか。我々の村では祭祀を専門に担当している人です。私は小さい頃から彼と漢方薬を勉強していました。だから私は今、ホテルで薬膳師をすることができています。」

韓智:「すごいですね。」

美珠:「いいえ。」

韓智:「先生だなんて呼ばないでください。韓智と呼んでください。」

美珠:「いいえ、やっぱり先生とお呼びしたほうがよいと思います。」

韓智:「ところで、どこのホテルで働いているのですか?」

美珠:「郎岱古鎮ホテルです。」

美珠:「韓先生、あなたの足は夜に痛むかも知れません。だから、痛み出す前に、早めに休むことをお勧めします。」

美珠:「夜、もし我慢できないくらいに痛くなったら、呼んでください。私は上の屋根裏にいます。」

韓智:「はい、分かりました。おやすみなさい。」

美珠:「ではお先に失礼します。」

韓智:「おい、劉洋、私たちのホテルの薬膳師の名前を調べてくれるか?」

美珠:「宇ちゃん。」

小宇:「動かさないで。」

美珠:「はい。」

小宇:「さっきの男は誰。」

美珠:「そうそう、いま話そうと思っていたの。今日は山で薬を採取した時、大きなものが、さっと飛んで行ったの。私はものすごく大きな鳥が飛んで来たのかと思って。それから誰かが怪我をしていることに気が付いたの。そして彼の手当てをするために連れて帰ってきたの。それから、さっきはあの人を運ぶのを助けてくれてありがとう。そしてね、あの男の人が韓先生だということがさっき分かったの。韓先生を知っているでしょう。この前、私があなたに見せた詩集は彼が書いたものなの。覚えるでしょう。」

小宇:「わかったよ。」

小宇:「教養があればすごいのか。」

美珠:「教養があることがすごいというわけではないわ。」

小宇:「村には村の法がある。そして家にはそれぞれ、その家族のルールがある。だから皆、邪魔されるのが好きじゃない。」

美珠:「傷が治るまでの間だけよ。」

小宇:「いつ治るんだ。」

美珠:「足を怪我しただけ、すぐ治る。」

小宇:「じゃ、彼の足が治ったらすぐに出て行ってもらえ。いいな。」

美珠:「うん。宇君、曲を吹いてくれませんか。」

小宇: 「いや、家に男を連れて帰ってくるような女を、村人たちはどう思う?みんなは納得するだろうか?しかも、君は何年も村の外で働いている。結局はどう?私と一緒に村に帰ろう、いい?一緒に手作りの品物を作って暮らそう。私はできるだけ販路を拡大するから。」

美珠:「でも、私はそういうのは嫌です。」

小宇:「 じゃ、お前は何が好きなの?」

美珠:「薬膳が好きなの、だからずっと薬膳を作ってきました。いつも「村に帰ろう、帰ろう」って、あなたは私の気持ちを考えたことがあるの?」

小宇:「僕はいつも君のために何が一番いいかを考えている。」

美珠:「私のためって、どういうこと。宇君、あなたは一体どうしたの?私は今日、あなたに曲を吹いてもらうために来たのに、ずっと「あの男、あの男」と言って、あの人にはちゃんと韓先生っていう名前があるのよ。」

小宇:「俺は女の子を連れて帰ったことがある?」

美珠:「じゃあ彼を山の中で見殺しにすればよかったの?あなたはそういう人なの?私はそんなことできない。村の決まりのことはちゃんとわかっています。村の人たちはみんな私たちのこと知っています。あなたは一体何をそんなに心配しているの。」

小宇:「僕は心配なんかしていない。」

美珠:「しています。」

小宇:「お前はもう以前とは変わってしまった。」

美珠:「そんなことはありません、変わってしまったのは宇君だよ。」

美珠:「韓先生、起きましたか。」

韓智:「はい、お入りください。」

美珠:「ちょっと待ってね。」

劉洋:「すみません、昨日、怪我をした男性が村に来たと聞いたのですが、彼は今どこにいるか知っていますか?」

小宇:「はい、この先の左手の一番目の家です。」

劉洋:「ありがとう。」

美珠:「清潔な服を用意したので、着てみてください。」

劉洋:「おばさん、ちょっと聞きたいことがあるんです。昨日、友達が怪我をしました。、彼は今、こちらの家にいますか。」

美珠の母:「はい。美珠、彼を迎えに来た人がいます。さあ、中に入ってください。」

劉洋:「ありがとう。韓智、びっくりしたぞ。この前はうまくできたと言っていたが、全然ダメだったじゃないか。この程度では試合に出られるもんか。あっ、ところで・・」

美珠:「私、水を取りに行きます。」

劉洋:「お前が言っていた薬膳師の名前がわかったぞ。」

韓智:「ああ、もう知ってる。今日、俺を背負って帰れるか?」

劉洋:「お前、重いか?」

韓智:「ああ。かなりひどいんだ。触らないで、痛いから。」

劉洋:「おれは怪我の具合ではなくて体重のことを言ったんだよ、体重。なあ、韓智、ひとつ相談なんだが、お前の足が治るまではまだしばらくかかりそうだ。近いうちに開催される展覧会に向けての準備で会社も忙しい。足が治ったらまた迎えに来るというのはどうだ?もし、今帰ったとしても、薬を塗ってくれる人もいない。」

韓智:「お前はマネージャーだよね、なんでそんな無責任なことを言うんだ。   」

劉洋:「はい、新しい携帯。何かあったら、連絡してくれ。では、お願いします。彼が治ったら、私はまた迎えに来ます。」

美珠:「分かりました。」

劉洋:「では、失礼いたします。」

美珠:「お気を付けて。どうぞ。」

ズル(寨老):「往診ですか。」

ブモ:「はい、楊徳貴が病気になったから。」

小宇:「ズル(寨老)(村長)さん、おはようございます。散歩ですか?あの、ズル(寨老)さん。先日美珠は一人の男を連れ帰りましたが、あの人いまだに彼女の家にいます。変な噂になると困ります。」

ズル(寨老):「わかった。行ってみよう。」

美珠:「今日はいい天気なので、布団を干してあげましょう。」

韓智:「うん、ありがとう」

美珠:「新作ですか。「昼間は、鮮やかな青。夜は静寂に包まれ、ひんやりと、そして気持ちが生き返るだろう」

ズル(寨老):「美珠のお母さん(イニアン)」

美珠の母:「はい、ズル(寨老)(村長)さん。」

ズル(寨老):「美珠のお父さん(イバ)は?」

美珠の母:「まだ山の方でトウモロコシを収穫しています。ズル(寨老)(村長)さん、どうぞこちらにお掛けください。」

ズル(寨老):「村人から、美珠が男性を救ったと聞きましたが、治ったら早く出ていかせてください。よその男を長い間ここにさせるのはよくないから。」

美珠の母:「ええ。また今度。」

美珠:「どのような経験があって、このような詩が書けるようになったのですか。」

韓智:「動き回ることができないので、ベッドに横になっているときに心に湧いてくるものを書いただけです。」

美珠:「すごいですね、私もこのような詩が書けたらなぁ。あなたの詩は読む人のこころを暖かくします。」

美珠の母:「美珠。」

美珠:「はい。」

美珠の母:「今からおばさん(ミイアン)のところに行って、刺繍した布をもらってきてくれないかしら。その布で服を作ってあげると約束したから。美珠、あの人はどうしてまだ出ていかないの?村で噂になっているのよ。さっき、ズル(寨老)(村長)さんも来たわ、早く出て行ってもらえって。」

美珠:「わかってる。怪我が治ったら出て行ってもらう。じゃ、布を取りに行ってくる。」

美珠:「ここにいたの。」

韓智:「うん、新鮮な空気を吸いたくて。」

美珠:「風邪をひかないよう気を付けてくださいね。」

韓智:「美珠さん。」

美珠:「うん?」

韓智:「あなたは特別な人だ。」

美珠:「どうしてそう思うの?」

韓智:「あなたはこの村の他の娘とは違うと思うから。」

美珠:「でも、私は子供の時からここに暮らしているの。この村の隅々まで知っているわ。」

韓智:「薬膳も作れるし、文学も好きだ。このような女の子は都会でも珍しい。ましてや、このような山の村に住んでいるようならなおさらです。」

美珠:「たぶん、私は薬膳と文学、どちらも本当に心から楽しんでやっているから、そんなに特別なことではないと思います。」

韓智:「限られた人生をどうやったら有意義にすごせるのかは、誰にもわからない。ただ、私たちは人生を楽しむことができる、ということは真実です。好きで打ち込めるものがあるのは、それ自体が幸せなことだと思います。」

美珠:「ええ、確かに。」

韓智:「だからあなたが今、幸せなのは本当だと思います。」

美珠:「私にとって、強く求める必要があるものはありません。幸せは探さなくても、すぐそこにあるから、探す必要がないんです。それよりももっと大切なことは、その幸せをどう扱い、向き合うのか、です。」

韓智:「あなたの人生観はとても素敵です。美珠さん、あなたは汝磁(磁器の一種、河南省平頂山市の特産)よりも美しい。汝磁は千年かけて磨き上げられた美しさだが、あなたはそのように時間をかけて磨く必要がないくらい美しい。」

美珠:「あまり褒めないで、調子に乗ってしまうわ。」

韓智:「あなたは今、人生で一番美しい時だ。この美しさを失わないままでいてほしい。真の美しさは、内面からにじみ出てくるものです。きっとあなたはたくさんの本を読んできたのですよね?」

美珠:「そ、そんなことないわ。読書はただ私の視野を広げてくれるだけです。この山々こそが、私に強い影響を与えてくれたものだと思います。山に行って薬を採るたびに、知らない植物に出会います。そして私はいつも、喜んでまだ知らない植物を見つけ出し、学びたいと思っています。植物の命はとても短いことに気が付きました。秋が来たら、枯れてしまいます。でも、植物は、発芽から実を結ぶまで、まっすぐに、1秒も無駄にせず生きていました。どんな暑さの中でも、嵐の中でも、精一杯生きていました。最後の一粒の種を大地に落とすまでは、どんなに風に吹かれても倒れずに、秋風に立ち向かいます。分かりますか。植物はその生の間、いつも笑顔を絶やしません。私はそんな植物たちからたくさんの力をもらうことができます。ごめん、くだらない話ばかり。どうか笑わないで。」

韓智:「もちろん。」

美珠:「じゃ、私そろそろ仕事に行きます。どうぞ、ご自由になさって。」

韓智:「分かった。」

美珠:「粗く、青く染められているけれども、君は水と夢が詰まった磁器だ。寝ぼけた子供のように、白い紙に自分の姿を描き、生きてきた歳月を示す。皆の期待を背負い、あなたは私のところへやってきました。まるで初めての抱擁のように。君は受け入れながら疑っている。両手で君を泥の中から引き揚げて、共に回廊を通り抜け、共に豪雨をくぐる。烏蒙山であなたに恋をした。君は眩しく輝いて見える。」

韓智:「忘れられない出会いを待ちわびる。もし僕たちが出会えるのならば、君を抱きしめて、心を込めて磨くよ。」

ブモ:「美珠、美珠。」

韓智:「どなたですか。」

ブモ:「お前は美珠が救ったという男か?」

韓智:「はい、そうです。彼女は今いませんが」

ブモ:「うん、あなたのお名前は?」

韓智:「韓智と申します」。

ブモ:「美珠はこの村で一番いい娘だ。」

韓智:「はい。」

ブモ:「美珠のことが好きなら、彼女を大切にしてください。あの子は子供の頃、とても身体が弱かった。だから、大切にしてあげてほしいのだ。あの子の心を傷つけないでほしい。分かったか?」

韓智:「はい、わかりました。」

美珠:「お父さん(イバ)、お母さん(イニアン)行ってきます。」

韓智:「これまでお世話になりました。いろいろと助けてくださり、心から感謝します。また機会があればお会いしましょう。」

美珠の母:「美珠、午後までここにいられないの?」

美珠の母:「あなたに刺繡を手伝ってもらいたいの。」

美珠の父:「刺繍のことは忘れろ。」

美珠の父:「美珠を韓さんと一緒に行かせるんだ。そうすれば何かあった時にお互い助けあえるだろう。」

美珠の父:「そうだろう。」

美珠:「じゃあ、行ってきます。」

美珠:「ブモ」

ブモ「:え、美珠。」

美珠:「休みが終わったので仕事に戻ります。」

ブモ:「そうか。ちょっと待っててくれ。」

韓智:「彼があなたが言っていた、魔法使い(祭司)の方ですか?」

美珠:「そうよ」

ブモ:「美珠よ、あなたいくつか薬草を用意しておいたよ。この2つの包みの薬は、あなたの心を落ち着けてくれる効果がある。」

ブモ:「20分から半時くらい煮て」

ブモ:「そして、こちらの方を加えてさらに5分煮るのだ。」

ブモ:「間違えないように。」

美珠:「ありがとうございます。」

ブモ:「どういたしまして」

美珠:「それでは、行くわ。」

ブモ:「気をつけて。」

韓智:「彼は君のことを本当に気に欠けているんだね。」

美珠:「もちろん」

ブモ:「それが運命なんだよ。」

韓智:「劉さん」

劉洋「:はい」

美珠:「ありがとう」

劉洋:「車に乗って」

劉洋:「ホテルに戻る前に」

劉洋:「工場の方へ先に案内します。」

劉洋:「君も久しぶりに体を動かしたほうがいい。」

美珠:「先にホテルに戻ったほうがいいわ。」

美珠:「最近ホテルは忙しいです。」

劉洋:「先にホテルまで送ってしまうと回り道になるよ。」

美珠:「ああ」

韓智:「あなたはいろいろなことを考えすぎたくないと言ったじゃないですか。」

韓智:「外の空気を吸ってリラックスしましょう。」

韓智:「とてもおいしいいラーメン屋があるんだ。」

美珠:「私もひとつ知ってるわ。」

美珠:「でも、だいぶ長いこと行ってないから、まだその店があるかどうかわからない。」

韓智:「私の言ったラーメン屋はその建物の前です。」

韓智:「あれがそのラーメン屋だ。」

美珠:「ここ?」

韓智:「こんなにたくさんラーメンを干してあるということは繁盛しているのね。」

韓智:「そうだね。」

韓智:「すみません、岩足麺を2杯おねがいします。」

店員:「かしこまりました。」

店員:「どうぞお召し上がってください」

韓智:「ありがとうございます。」

美珠:「うん、おいしそうなにおい。」

小宇:「お前は変わってしまった。」

劉洋:「もしもし、韓か?」

劉洋:「すぐに病院に来てくれ。美珠さんが倒れて運ばれたんだ。」

美珠:「ここはどこ?」

看護婦:「目が覚めましたね。ここは病院です。」

美珠:「先生」

医師:「お目覚めですか。」

美珠:「私はどうしたのでしょう?」

医師:「あなたは心臓の病気、僧帽弁不全です。」

医師:「できるだけ感情的にならないようにしないといけません。」

医師:「そして、しっかりと休むように気をつけましょう。」

美珠:「はい」

韓智:「目が覚めた?」

美珠:「来てくれたのですか」

韓智:「はい」

美珠:「どれくらい寝ていたのでしょうか?」

韓智:「まる一日寝ていました。目が覚めてよかった。」

韓智:「お粥はいかがですか?」

美珠:「ありがとう。でも」

美珠:「食欲がないの。」

韓智:「そうですか。」

韓智:「劉に、あなたの両親を迎えに行くよう頼みました。」

美珠:「ありがとう。」

韓智:「私はこれから仕事に行かなければならない。」

韓智:「ゆっくり休んでください。」

三人:「韓社長」

韓智:「はい。どうしたの」

通行人:「今日は仕事が休みだから美珠のお見舞いに来たの」

通行人:「そうよね」

韓智:「そうですか。まあ、ちょっと仕事があって・・・お先に失礼するよ。」

通行人:「はい。また明日。相変わらず素敵ですね。」

通行人:「美珠、美珠」

美珠:「来てくれたの。」

美珠:「ありがとう。」

通行人:「このお花、お見舞いに。」

美珠:「そこにおいてくれる?」

美珠:「今日は仕事ではなかったの?」

通行人:「今日はお休みをもらっているのよ。」

通行人:「ねえ美珠、さっきホテルの韓社長を見たよ。」

通行人:「彼はどうしてあなたに会いに来たの?」

通行人:「あなたは普段、外に出ないでいつも薬膳屋にばかり籠っているのに。どうやって韓社長と知り合ったの?」

通行人:「わかった!韓社長は部下にもとても気配りができる人なのね。」

美珠:「そんなんじゃないわ。」

通行人:「ねえ、はやく話す、どうやって知り合ったの。」

通行人:「ねえ教えて!どうやってお近づきになったの?いつお付き合いをはじめたの?」

美珠:「そうじゃないのよ。」

美珠:「韓社長はただ部下に会い来ただけよ。」

小宇:「体の具合はどうですか。気分は良くなりましたか。」

小宇:「ただでさえ子供の頃から体が弱いのだから、一人でいる時は特に体に気をつけてください。」

小宇:「すごく心配なんだ。」

美珠:「うん」

美珠の父:「宇くん」

小宇:「えっ?」

美珠の父:「疲れているんじゃないか?」

美珠の父:「私も、美珠の母親もここにいるから、小宇くんは用事がなければ家に帰って休んでいたら。」

美珠の母:「あなた、私と市場に買い物に行きましょう。」

美珠の母:「小宇君はここにいて。美珠、ちょっと行ってくるわね。」

美珠父:「小宇くん、家に帰って休みなさい。」

小宇:「バナナをとってあげようか。」

美珠:「いいえ、いらないわ。」

美珠:「今日は村での用事は無いの?」

小宇:「大丈夫、 心配しないで。用事は特にないから。君に会いに来たかったんだ。」

小宇:「これは私の母(イニアン)が私に残してくれたものです。」

小宇:「今からあなたに預けておきます。」

小宇:「病気が治ったら岩足町に連れて行ってやる。」

小宇:「よしよし」

小宇:「私が作ってあげたチキンスープを食べてみて、まだ温かいよ。」

韓智:「美珠、ドラゴンフルーツ買ってきたよ。」

韓智:「来ていたのか」

小宇:「はい」

小宇:「韓さんこそどうしてここへ?」

美珠:「宇ちゃん、紹介するわ。」

小宇:「紹介しなくてもわかるよ。あの詩人じゃないか。」

美珠:「彼は詩人だけではないわ。」

美珠:「彼は私が働いているホテルの社長です。」

美珠:「韓社長、こんにちは。」

韓智:「あなたたち、どうかしたの?」

韓智:「社長だなんて呼ばないで、韓智と呼んでください。」

小宇:「韓社長、私と美珠のことは村のみんなが知っています。」

小宇:「二度と彼女を困らせてほしくない。いいですか。」

小宇:「僕はこれから村に戻ります。村で用事があるんだ。チキンスープ、冷めないうちに食べてください。」

韓智:「彼は、どうかしたのですか?」

美珠:「宇ちゃんと私は、去年の花祭りでお付き合いをすることになったんです。」

美珠:「韓社長、ずっとお礼を言いたいと思ってました。」

美珠:「あなたがずっと気にかけてくれてくださったことは承知しております。」

美珠:「約束します。」

美珠:「あなたが立て替えてくれた医療費は。」

美珠:「家に帰ったらすぐ、父(イバ)にお願いしてお返しします。」

韓智:「そんなこと心配しないで。こんど船に乗りに行きましょう。」

韓智:「退院したばかりなのだから。風邪を引かないようにしないと。」

美珠:「人生では、個人の尊厳より大切なものがあります。」

美珠:「たとえば、家族の尊厳、部族の尊厳。」

韓智:「どうしてそんなことを言うのですか?」

美珠:「私たちの村では、女の子は産まれた時から」

美珠:「髪の毛を捨てずに貯めておきます。」

美珠:「糸に編んで、巻いて」

美珠:「代々伝えていきます。」

美珠:「私たちにとって、命をつなげていくことの象徴です。」

美珠:「だから、村からどんなに遠く離れたとしても」

美珠:「結局は村に帰ることになる。」

美珠:「そこで結婚し、子供を産み、育て、命が尽きるまでそこで暮らすの。」

美珠:「何代も、何代も。」

韓智:「行こう、あなたに見せたいところがあるんだ。」

韓智:「二人で、願い事をここに書いて」

韓智:「もし二人の願いが同じだったら」

韓智:「その願いは叶うという伝説がある」

美珠:「韓智」

美珠:「来世で一緒になりましょう。約束します。」

韓智:「来世でなんて願わなくていい。今でも一緒にいるじゃないか。」

韓智:「思っているほど実は難しくないことはままある。」

美珠:「あなたにとっては、簡単に乗り越えられる単なる障壁の一つにすぎないかもしれません。」

美珠:「だけど私にとっては、この血の中にしみ込んだことなの。」

美珠:「私にとってはすでに人生の、命の一部なの。」

美珠:「誰にも拭い去ることなんてできない。」

美珠:「ずっと続いてきた伝統で」

美珠:「私たちの命よりもはるかに古くから、長く存在してきたものなの。」

美珠:「そういうものなの。」

美珠:「簡単には、変えられないのよ。」

韓智:「僕のことを好きだったことは一度もないって言えるのか?」

韓智:「なぜ自分の心が本当に求めることを選ばないんだ。」

韓智:「本当は、何に怯えているんだ?」

美珠:「韓智」

美珠:「私の魂は繞里にあります。」

お客さん:「すみません ワイン二本ください」「はいよ」

劉洋:「ね、韓智 いい人は他にもいるよ。」

劉洋:「いいかい、もうくよくよするなよ」

劉洋:「ほら、 飲もう。」

劉洋:「家に帰る道よ。」

劉洋:「一年の寒暑を数え。」

劉洋:「起伏する道中を数え。」

劉洋:「いくつの道を歩いただろう。」

劉洋:「家に帰る道よ」

韓智:「どうしていつもこの歌なんだよ。」

劉洋:「妹のこと思い出した。」

韓智:「君は妹がいるのか? は。」

劉洋:「ええ 僕は二子の妹がいたよ。」

劉洋:「生まれたばかりの時。」

劉洋:「二人とも心臓病があった。」

劉洋:「しかしあの時家は貧しくて一人しか救えなかった。」

劉洋:「両親は僕を救うために、妹を捨てた。」

劉洋:「僕 この僕を救った わかってくれるか。」

劉洋:「あの時彼女はまだこれくらいの、生まれたばかりの赤ん坊だったんだ。」

劉洋:「うちの家族は今は豊かになった。」

劉洋:「だけど、豊かになるほど苦しくなっていくんだ。」

劉洋:「妹のことを必死で探している両親の様子を見る度、たまらなく辛い気持ちでいっぱいになるんだ。」

劉洋:「とてもたまらないよ。」

劉洋:「いつも。」

劉洋:「もしある日彼女が見つかったとしたら、たぶん僕のことを恨むって思っている。」 

韓智:「どうして、今までこのことを一度も話してくれなかったんだ。」

劉洋:「何年も探した だけど全然手がかりがない。」

劉洋:「彼女の体には何か目印になるようなものもない。」

劉洋:「ただ僕と同じペンダントを持っているはずだと父が言っていた。」

小宇:「ズル(寨老 注:村の紛争の仲裁や公益事業、集合を主催することなどいろいろな要務を担当する村にいる徳望が高い人を指す)」

ズル(寨老):「宇ちゃんが来た」

小宇:「おじさん(バヨ)」

ズル(寨老):「叩頭しなさい。」

他の人:「もういいと言われるまで叩頭を続けるんだ。」

美珠の父:「もういいよ、起きなさい。」

小宇:「はい」

ズル(寨老):「鶏卦(占い)を始めるので、まず料理(鶏肉)を食べてもらう。」

ズル(寨老):「今から鶏卦の結果を確認する。」

ブモ:「誰が鶏卦の結果を見るのだ。」

ブモ:「この結婚は二人にとっていいことなのか?」

ブモ:「確認しろ。」

ブモ:「お前は本当に馬鹿者だ。」

ブモ:「ちょうどいい寨老もおり、村のみんなもいるから。」

ブモ:「みんなの前で」

ブモ:「全部正直にはっきりと 話すときだ。」

ブモ:「これは美珠の生みの親が残した手紙だ。」

ブモ:「さっきこの山の下でこの子を拾った。」

ブモ:「おそそらく、この子の親は何かの理由があってこの子を育てられなかったんだろう。」

ブモ:「奥さんは子供を失ったばかりで。」

ブモ:「この子も乳を待っているので。」

ブモ:「抱いて帰ろう これは運命だ。」

ブモ:「このことは私たち二人の間の秘密だ。誰にも言わないでおこう。」

ブモ:「約束する。心配するな。帰ろう。」

ブモ:「私はずっと、この手紙を大事にし保存してきた。」

ブモ:「今、お前にも見せよう。」

美珠の母:「私、、私の子供はどこにいるの?」

美珠の母:「父さん 私の子供はどうなったの?」

美珠:「お母さん!(イニアン イニアン)」

美珠:「その手紙見せてください。」

美珠:「なぜずっと話してく出さらなかったのですか?」

ブモ:「美珠」

ブモ:「みんなを恨まないで。」

美珠:「お父さん(イバ) お母さん(イニアン)」

美珠:「子供の頃からずっと一緒にいますから。」

美珠:「たとえあなたたちが本当の両親でなかったとしても」

美珠:「他の誰が、私の両親になりえるでしょう。」

美珠:「ブモ。」

美珠:「お願いです。」

美珠:「美珠はこの村の子です。」

美珠:「よそ者ではありません。」

美珠:「お父さん(イバ)、お母さん(イニアン)」

美珠の母:「美珠」

ブモ:「立ちなさい。」

美珠:「私はこの村の者です。」

ブモ:「美珠 立ちなさい」

ブモ:「立って、話をさせてくれ。」

ブモ:「君を君のお父さんに渡したとき。」

ブモ:「君のお母さんに真実を告げなかったのは。」

ブモ:「彼女があまりにも深く悲しむのではないかと心配だったからだ。」

ブモ:「その後、君は大きくなった。」

ブモ:「告げたら 君も悲しみ、ショックを受けるのではないかと心配だった。」

ブモ:「美珠 君は常に、この村で一番のいい子だった。」

ブモ:「宇ちゃん、君もいい子だ。」

ブモ:「だがしかし、君たちの縁が繋がっていないのだ。」

小宇:「ブモ 安心してください。たとえ結婚できないとしても、美珠とぼくはいつまでも兄弟のように慕い合います。」

ブモ:「ありがとう。」

韓智:「美珠」

美珠の独白:

私はこの民族に属してはいないけれど

ここにいる人々 村の隅々

生きている生き物 一寸一寸の泥土

そして伝統は、

全て私の体に深く刻みつけられている。

私たちは同じ空気を呼吸し

私たちは同じ信念を持っている

彼らを愛している

彼らの純粋さと温厚さを愛している

争いを好まず、平穏で、

謙虚な彼らを愛している。

私の心はいつも彼らと共にある 

私は永遠に長角苗の子だ

どこに行っても

この世界が    どのように変わっても

私の魂は永遠に繞里にあるんだ


(エンディング)

歌詞:

三つの小坂は向かい合う

この方は今嘎寨の寨老を担当しており、八十二歳になり、今でも村のいろいろな事柄を主催している。村の老若男女に尊敬されている。

風に吹かれる木葉対対説き

今日は君と一枚の紙隔て

明日は九層の坂隔てる