吊脚楼(ちょうきゃくろう)
ミャオ族(苗族)の伝統的な住居は、「吊脚楼(ちょうきゃくろう)」と呼ばれる高床式の木造建築であり、主に山の斜面に沿って築かれるのが特徴である。これは、湿気の多い亜熱帯性気候や害虫、獣害から生活空間を守るための実用的工夫であり、同時に斜面地に適応した居住形態でもある。
吊脚楼は、下層に豚・牛・鶏・アヒルなどの家畜を飼育する空間を設け、その上に生活空間を配置する。建物の構造は地形の勾配に応じて柔軟に設計されており、平地に近い場所では一階建て、斜面の急な場所では二階建てや三階建てとするなど、自然環境に適応した合理的な構造を持つ。
また、建築材には現地で入手可能な木材が用いられ、釘を使わずに木組みで仕上げる技法が多く見られる。これは代々受け継がれてきた大工技術の粋であり、文化的価値の高い無形の民俗技術としても注目される。