民族祭り

苗族「招龍節」祭り

2021-02-18

翻訳:楊 順佳

修正:宮澤 詩帆

指導:王 暁梅、楊 梅竹

監修:姚 武強

補筆・再構成:CJ NaoTo



 招龍節(しょうりゅうせつ)」は、中国南西部に広く居住するミャオ族(苗族)に伝わる、13年に一度のみ開催される希少な民俗祭儀であり、農耕文化に根ざした龍信仰を色濃く反映する重要な年中行事のひとつです。


ミャオ族において、龍は単なる伝説上の生物ではなく、風雨を司り、農作物の生育や人々の生活を潤す「水の霊的存在」として畏敬されています。招龍節は、こうした龍の霊力を招き、厄災の除去、五穀豊穣、家内安寧、そして新しい歳の吉祥を祈願する儀礼として位置づけられます。


この祭りは一朝一夕に準備できるものではなく、村全体による長期的な協議と緻密な準備を要します。祭儀の執行日は、伝統的な暦や占いによって慎重に選定され、祭司(シャーマン)や儀式において屠殺される水牛(龍の象徴)の選出、供物の準備などが段階的に決定されます。14歳以上の男子には、世代継承的役割分担が与えられ、村の総力を挙げて祭りの準備が進行します。


祭り当日、選ばれた水牛と供物を携えて、村人たちは儀礼の聖地とされる山へと向かいます。山頂では、白紙の幡(はた)が風に揺れ、蘆笙(ろしょう)と呼ばれる伝統的な笛の音が辺りを満たすなか、霊的中心である主峰において荘厳な祭祀が執り行われます。この儀礼は、山神および龍神を喚び寄せ、天と地を結ぶ儀式空間の中で交感が成されると信じられています。


また、祭り期間中には、女性たちが色鮮やかな民族衣装や金銀の装身具に身を包み、装いによって龍の来訪を歓迎する意志を表します。村中が蘆笙の音色に包まれ、老若男女が手を取り合って踊り、各家庭では「引龍宴(いんりゅうえん)」と呼ばれる饗応の宴が催され、共同体全体で龍神への感謝と祝福を捧げます。


なお、直近では2024317日、貴州省榕江県(銅鼓地区)および従江県などにおいて、本祭が盛大に挙行されたことが報告されています。これに基づき、次回の開催は13年後の2037年に予定されていると推測されます。