民族祭り

苗族「爬山節」祭り

2021-02-18

翻訳:楊 順佳 

修正:宮澤 詩帆

指導:王 暁梅、楊 梅竹 

監修:姚 武強

補筆・再構成:CJ NaoTo


ミャオ族に伝わる「爬山節(はざんせつ)」は、千年以上の歴史を有する伝統的な祭りで、毎年旧暦の3月19日に開催されます。


この日、黔東南(けんとうなん)・凱里(カイリ)地区に暮らすミャオ族の人々は、神聖な香炉山に集い、歌を口ずさみながら山を登り、自然と共にある豊穣や縁結びを祝います。特に若い男女は、山道をたどりながら交互に歌を掛け合い、心を通わせていきます。最初に山頂へ到達した者は「山登りの英雄」と称えられ、その勇気と健やかさを讃えられるとともに、娘たちからも好意を寄せられる名誉ある存在となります。


この祭りの起源には、ひとつの美しくも切ない伝説が語り継がれています。


――昔々、天帝(玉帝)の娘である阿別(アベツ)は、地上に暮らす英俊な青年・阿補(アブ)に恋をします。ふたりは身分の違いを超え、深く愛し合い、阿補は天界から人間界へと降りて阿別と結ばれました。二人は幸せな家庭を築き、子どもにも恵まれて穏やかな日々を過ごしていました。


しかし、この愛は天帝の怒りを買うことになります。天界の掟に背いて人間界に降りた阿補に、天帝は重い罰を与えました。阿補は、自らの命と引き換えに愛する阿別と子どもたちの安寧を願い、香炉の姿となって山中に残ることを選びます。それ以来、香炉山には阿補の霊が宿ると信じられ、彼の深い愛と犠牲の物語は、ミャオ族の人々の心に静かに息づいてきました。


この伝説にちなみ、ミャオ族の人々は、阿補が香炉へと姿を変えた日を「爬山節」として記念し、年に一度、愛と祈りを胸に香炉山を登るのです。この祭りは、単なる娯楽にとどまらず、祖先への敬意と自然への感謝、そして純粋な愛の象徴として、今なお大切に受け継がれています。