翻訳:楊 順佳
修正:宮澤 詩帆
指導:王 暁梅、楊 梅竹
監修:姚 武強
補筆・再構成:CJ NaoTo
ミャオ族における「客家年(はっかねん)」の年中行事としての意義
貴州省を中心に居住するミャオ族の間では、「客家年(はっかねん)」と呼ばれる新年行事が、漢族の春節(旧暦の正月)に相当する重要な伝統儀礼として受け継がれている。この行事は単なる年越しの祝いにとどまらず、祖先崇拝、自然信仰、農耕儀礼といったミャオ族の文化的世界観を色濃く反映している点で注目に値する。
旧暦の大晦日(除夜)には、家族や親族が一堂に会し、家屋の門を開放して爆竹を盛大に鳴らす。この音には、過ぎ去った一年の穢れや邪気を祓い、新年の幸福と清浄を迎え入れるといった意味が込められている。爆竹は翌朝の元旦にも鳴らされ、祖先への敬意とともに、新たな年の無病息災と家内安全を祈願する役割を担っている。
とりわけ特徴的なのは、「牛を駆り、羊を駆り…」という唱え言葉とともに、両手で家畜を制する所作を行う習俗である。これは、家畜の健康と繁殖、ひいては農耕の豊作を願う農耕儀礼の一形態とみなされており、自然と共生するミャオ族の生活文化が象徴的に表現されている。また、これに続いて供される「年ご飯」は、餅、干し肉、魚などを含む正月料理で、家族の団欒と収穫への感謝の場ともなっている。
正月期間には、ミャオ族の人々は伝統的な民族衣装をまとい、親類縁者の家を訪問して挨拶を交わす。こうした儀礼的交流は、単に祝意を表すのみならず、親族・村落共同体間の絆を再確認する重要な社会的行為でもある。さらに、若者たちは村の広場や野外に集まり、芦笙や月琴などの民族楽器を奏でながら、歌と踊りを披露する。このような芸能的活動は、娯楽の場であると同時に、世代を超えて伝承される文化表現の継承でもある。
地域によっては、「踏花山」と呼ばれる山上での舞いや「闘牛」といったより儀礼性の高い競技も行われており、祝祭全体が民俗信仰、芸能、社会構造を包括した複合的な文化体系として位置づけられる。「客家年」はそのようなミャオ族の伝統文化を体系的に理解するうえで、非常に重要な実践例のひとつといえる。