翻訳:楊 順佳
修正:宮澤 詩帆
指導:王 暁梅、楊 梅竹
監修:姚 武強
補筆・再構成:CJ NaoTo
水とともに生きるミャオ族の祭り
――「捕魚節(ほぎょせつ)」の歴史と現在
「捕魚節(ほぎょせつ)」は、貴州省中部を流れる独木河(どっこくが)および南明河(なんめいが)の流域に暮らすミャオ族の人々によって継承されてきた、自然への感謝と共生を象徴する伝統的な祭礼です。
その起源は、農耕と深く結びついた「雨乞い」の儀式にあります。かつてミャオ族の人々は、田植えに必要な水を確保するため、川辺に集まり、竜王に向かって降雨を祈る祭礼を執り行っていました。独木河が貴州の大地を潤すように、村の人々は自然の恵みを願い、五穀豊穣と家畜の無事を祈ってきたのです。
やがて時代が移り変わる中で、この祭りは徐々にかたちを変え、現在では魚を捕るイベントとして親しまれるようになりました。とはいえ、その根底には、自然に対する畏敬と、季節のめぐりに寄り添って暮らすミャオ族の精神文化が息づいています。
祭りの日には、地域の人々が川辺に集まり、素手や簡素な道具を使って一斉に魚を捕らえる光景が広がります。歓声と笑顔に満ちたその風景は、単なる娯楽としてのイベントではなく、共同体の絆を再確認し、祖先の教えを次世代に伝える文化的な営みでもあるのです。
今日の「捕魚節」は、農耕儀礼から娯楽的要素を取り込んだ形へと進化を遂げたものの、もともとの「水への祈り」という精神は今も変わることなく受け継がれています。人と自然とが共に在ることの大切さを伝える、貴州の初夏を彩る風物詩のひとつです。