民族祭り

苗族「踩鼓節」祭り

2021-02-18

翻訳:楊 順佳

修正:宮澤 詩帆

指導:王 暁梅、楊 梅竹

監修:姚 武強

補筆・再構成:CJ NaoTo


ミャオ族の太鼓祭り「踏鼓節 / 踩鼓節(さいこせつ)」


――音と舞で紡がれる、春のはじまりの祝祭


「踩鼓節(さいこせつ)」は、貴州省の凱里(カイリ)市、丹寨(タンジャイ)県、雷山(レイシャン)県など、ミャオ族が多く暮らす地域で広く受け継がれている伝統的な春祭りです。毎年旧暦2月、最初の「亥の日」に開催されるこの行事は、自然の目覚めとともに人々の心を弾ませ、村全体が太鼓と踊りの熱気に包まれます。


祭りの主役は、地域の広場に集まった若い男女たち。彼らは巨大な太鼓の響きに合わせて踊りを披露します。これが「踩鼓(太鼓を踏む)」という名前の由来でもあり、太鼓のリズムに合わせて足踏みしながら舞うことで、大地の神々に春の訪れと五穀豊穣を祈願する意味が込められています。


この太鼓は特別なもので、楠(くすのき)の巨木をくり抜き、両端に牛革を張って仕立てられた大型のもの。普段は村の長老や尊敬を集める年長者の家に大切に安置されています。祭りの始まりには、まず太鼓の管理役である「太鼓の主人(ドラム・キーパー)」が太鼓を力強く打ち鳴らし、春の祭りの幕が開けます。


太鼓の音が山あいの村々に響き渡ると、人々は続々と広場に集い、踊りの輪が広がっていきます。若者たちはこの踊りを通じて互いに心を通わせ、恋が芽生えるきっかけにもなります。一方で、年配の人々も晴れ着に身を包み、太鼓の周囲で伝統歌を歌いながら、祭りに彩りを添えます。


踊りがひと段落すると、若い娘たちは手作りの花帯(飾り帯)を気になる相手にそっと手渡し、感謝や好意を示すという、美しい風習も残っています。


祭りの終幕では、太鼓の管理役である「太鼓の主人」が太鼓を自宅へ持ち帰り、家屋の上階に慎重に安置します。その後、魚や肉、酒などを供え、太鼓そのものと、太鼓を通じて祖霊への感謝を捧げる儀式が行われます。


このように「踩鼓節」は、恋や豊作、先祖への感謝といった多様な意味を内包した、ミャオ族にとってきわめて重要な年中行事です。太鼓の音と踊りが織りなすこの祝祭は、民族の誇りと伝統を今に伝えるとともに、共同体の絆を確かめ合う貴重な時間でもあります。