翻訳:楊 順佳
修正:宮澤 詩帆
指導:王 暁梅、楊 梅竹
監修:姚 武強
補筆・再構成:CJ NaoTo
蘆笙節に関する文化人類学的考察
蘆笙節(ろしょうせつ)は、中国貴州省東南部、特に凱里市・麻江県・丹寨県の境界地域において、ミャオ族(苗族)を中心に広く実施されている伝統的な年中行事である。本祭礼は、宗教的儀礼と民俗芸能が融合した複合的な文化現象として位置づけられ、主に祖先崇拝および豊作祈願を目的とする。
祭礼の実施時期は地域差が見られ、旧暦の正月・2月・3月を中心に開催されるが、一部地域では夏季(7月)に催される例もある。この可変的な開催時期は、各地の農耕暦や祖霊祭祀のタイミングと深く関わっていると考えられる。
祭りに先立ち、村落内では儀礼的な準備が行われる。とりわけ、儀式の主宰者には、宗教的権威を有する長老が任じられ、村民からの信望を背景に儀式全体を統括する。また、多くの家庭においても、個々に祖先を祀る私的な祭祀が並行して行われ、集団と個人の祭礼構造が同時に展開される点も注目に値する。
祭礼本番では、女性たちは色鮮やかな民族衣装に銀細工の装身具を纏い、祭場となる広場へと赴く。一方、男性たちは竹製の伝統楽器・蘆笙を携えて各地から集結し、輪を成して合奏を行う。蘆笙の音色は村全体に響き渡り、祝祭的な雰囲気が醸成される。
演奏と舞踊は連日連夜にわたって繰り広げられ、通常は4日から5日間に及ぶ。期間中、村は全体として祝祭空間へと変貌し、共同体の連帯意識や伝統的価値観の再確認がなされるとともに、若年層にとっては異性との出会いや婚姻関係の端緒ともなる社会的機能を有している。
蘆笙節は、ミャオ族における宗教的実践、世代間の文化伝承、ならびに共同体の再生産機構を理解するうえで、極めて重要なフィールドである。