翻訳:楊 順佳
修正:宮澤 詩帆
指導:王 暁梅、楊 梅竹
監修:姚 武強
補筆・再構成:CJ NaoTo
「喫新節(きっしんせつ)」は、中国貴州省黔東南ミャオ族トン族自治州を中心に居住するミャオ族(苗族)にとって、年に一度の重要な農耕儀礼である。祝祭の重要性は、ミャオ族の正月にあたる「苗年(ミャオ・ニエン)」に次ぐものであり、新米の収穫を祝うと同時に、祖先や農耕の神々への感謝と祈願を込めて執り行われる。
「喫新節」の開催時期は地域によって異なるが、一般的には旧暦6月中旬から7月中旬の間に行われる。この時期は、早稲の収穫が始まる頃にあたる。ミャオ族は、新しく収穫した稲を初めて口にする前に、必ず祖先や土地神に捧げる「新米の供え」を行う。これは、豊作への感謝と来季の安寧を祈る神聖な儀礼であり、自然との共生を重んじるミャオ族の世界観を象徴している。
祭りの主要な内容には、川での魚獲り、新米の収穫、そして祖霊祭祀が含まれる。家ごとに稲穂や野菜、豚肉、酒などを準備し、まずそれらを先祖の霊前に供える。その後、家族や村人たちが共に新米を炊き、祝いの食卓を囲む。このような「喫新」の儀式は、先祖とのつながりを確認し、共同体の絆を再確認する重要な機会でもある。
また、「喫新節」には歌や踊り、蘆笙(ろしょう)の演奏といった芸能的な要素も伴い、収穫への感謝と喜びを分かち合う祝祭的な雰囲気に包まれる。このような祭礼を通じて、ミャオ族は農耕文化と祖先崇拝を軸とした精神的・社会的アイデンティティを次世代へと継承している。