民族祭り

苗族「苗年」祭り

2021-02-18

翻訳:楊 順佳

修正:宮澤 詩帆

指導:王 暁梅、楊 梅竹

監修:姚 武強

補筆・再構成:CJ NaoTo


「苗年(ミャオ・ニエン)」は、苗族(ミャオ族)にとって一年で最も重要な伝統祭礼である。この祭りは、苗族における暦観や宇宙観を反映したものであり、単なる年越し行事にとどまらず、先祖への感謝と豊穣への祈願が込められた民族文化の中核的な儀礼とされている。


苗族の伝統的な暦法においては、一年を「夏」と「冬」の二季に分ける簡略化された時間認識があり、旧暦10月を「冬の始まり」と捉え、旧年が終わり新年が始まる転換点と見なしている。すなわち、「苗年」は旧暦10月を中心に行われる年始行事である。


苗年の祭期は年に一度で、通常3日から10日間程度にわたって催される。ただし、その具体的な日程や祝賀の様式は、地域や宗族によって大きく異なり、各地で独自の風習が受け継がれている。


この祝祭の起源に関しては、民間に複数の説が伝承されている。代表的なものとして、以下の三説が挙げられる。



1、最初の祖母「密洛陀(ミールオトゥオ)」の誕生を祝う説

密洛陀は苗族神話に登場する女性始祖であり、苗族の祖霊信仰において特別な位置を占めている。その誕生を記念することが、苗年の始まりとされる地域がある。



2、苗族を救った瑤王「青陸(チンルー)」の偉業を記念する説

太陽が複数存在して世界が灼熱に包まれていた時代、青陸が余分な太陽を射落として民を救ったという伝説に基づくものである。これは英雄的神話の形をとった自然制御と救済の物語とされる。



3、農耕文化の導入と引き換えに命を捧げた民族英雄「カハン」の命日を悼む説

カハンは、稲作文化を苗族にもたらした功労者として語り継がれており、その自己犠牲を記念する儀礼が苗年に組み込まれている地域も存在する。



祭りの前には、各家庭で甘酒(米を発酵させた伝統的飲料)や餅類を準備し、鶏や豚などの家畜を屠って供物とする。そして、「年神」および祖先の霊に感謝と祈願の意を捧げる。祭日の朝には早起きして爆竹を鳴らし、これによって邪気を祓い、一年の平穏と繁栄を願う。


苗年の期間中には、「蘆笙(ルーシェン)」という伝統的な楽器を用いた舞踊や、闘牛・競馬などの競技が各地で盛大に催され、民族の結束と祝祭の喜びが共有される。これらの行事は、単なる娯楽ではなく、共同体としての絆を再確認し、祖先とのつながりを再構築する重要な社会的儀礼でもある。